剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
 打ち上げ会場から一番近いコンビニが待ち合わせ場所。からからと下駄を鳴らして道を急ぐ。
 いや、急ぐ必要はないのだけど、頑張ったお洒落を早く見せたくてついつい足早になってしまう。

 もうすぐコンビニが見える。
 私はレースの付いた花柄のハンカチで額の汗を押さえ、髪とかんざしを指先で少し整えた。

 店先に黒のTシャツ姿の香取くんが見える。下駄の足がますます急く。


「香取くん!」

 小さく手を振って近付くと、香取くんもこちらに気付いた。


 ドキドキしちゃう!
 いつもと違う私を香取くんはどう思うかな?


「…こんにちは」

「……」


 気恥ずかしくて少し俯き加減で上目遣いに声を掛ける私を、香取くんはちらりと見た。
 そして何も言わず直ぐに眼を逸らす。


「行こ」

 すっと私の前を通り過ぎる。


(あ…)

 それだけ…?

(ピンクの浴衣、好みじゃなかったかな…?)

 ていうか…

(香取くんは別に私のこと何とも思ってないもんね…)


 私は彼の背中を追う。

 脚の長い香取くんについていくには下駄では少し歩きにくくて、ちょっと小走りで隣に並ぶ。

 香取くんはこちらに眼も向けず、でも少し足を緩めてくれた。


「ありがとう」

「…別に」

「……」

「……」


 こんな風に並んで歩くことがあまりないから、間が気まずい。


「あの…今日も暑いね」

「あぁ」

「夜になったら涼しくなるといいなぁ」

「うん」

「え、と…あ!花火、よく見えるとこ取れるといいね!」

「ん」

「……」

「……」


(やっぱダメじゃーん!)

 一生懸命話し掛けたつもりだけど話は続かないし、こっちも向いてくれないし…

 なんだか情けなくなって、諦めて俯いた。
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