剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?

(ダメ!ダメだよ、こんなの!!)


「やっ!やめてよ!」

 香取くんの手を振りほどき、思い切り胸を押す。

 香取くんは驚いたように私から身体を離した。


(香取くん、なんで…?)


 私の『恋』を応援してるくせに、私のこと好きじゃないくせに、なんでこんなことするの…?


 練習だとしても酷過ぎるよ。
 私、香取くんのこと好きなんだよ?香取くんにとっては何でもないただの友達でも、叶わなくても私は香取くんのこと大好きなんだよ?

 だから…だから…


(私のこと好きだと思ってないなら、それはダメだよ…)


 私を見下ろす香取くんの瞳に翳りが揺れる。

 私のこと好きじゃないくせに、どうしていつもそんな苦しい眼をするの?

 どうして…?


(あぁ、私は香取くんのこと、あまりにも何も知らない…)


 いつも気だるげでクールで無関心で、何かに一生懸命な姿なんて見たことない。


(あ、でも剣道…)


 でもそれだってあんなに強いのに

『じゃ俺が勝ったんで、約束通り剣道部には入りませんから』

なんて全然やる気なんてなくて。

 そのくせ

『中学の同級生なんだ。剣道部の。
 元々はちゃんと剣の道を理解して尊ぶ人間だった。
 そこのところを汲んで欲しい』

人のことは気にかけたりして。


『教えてやろうか?恋の仕方』

『稽古、つけてやるよ』

 私のことも…

 どうして私のためにそんなことしようと思ったの…?


 なのに香取くんはどうして…



「星宮…」


(そんな切ない声で呼ばないで…)

 香取くんは私のこと、好きじゃないもん。
 傍にいられること、触れられること、全部全部嬉しいけど…

 香取くんから眼を逸らす。

 そんな私に彼は言う。


「そんな顔するな」

「……」

「何もしないから」


 何もしない、じゃなくて、好きになって欲しいのに。
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