剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
香取くんは溜め息を吐くと、身体を起こした。
「…お前なんかに何かすると思った?」
「…え」
香取くんの無感情な視線が上から注がれる。
「このくらいのことでキーキー言うなよ。
そんな態度で接してたら、好きなヤツに早々に振られるよ?」
彼の冷たい笑みに私は頭の中がかっと熱くなるのを感じた。
(お前なんかに、って…
このくらいのこと、って…)
恥ずかしいとか、悔しいとか、痛いとか、傷付いたとか、そんなんじゃ言い表せない何かが私の中を駆け巡る。
「香取くん、こそ…」
唇が震えて、か細い声しか出ない。
私は眼を閉じた。いろんな思いが脳裏をよぎり、胸を押し潰されそうになる。
私は眼の奥が熱くなるのに耐えながら身体を起こした。傍らに座る香取くんとぐっと近付く。
彼の瞳を前に胸がきゅっと痛む。でも決してそこで泣いてしまいたくなかった。彼を真っ正面から見据え、声に力を込めた。
「香取くんこそ、なによ!」
叫ぶように言い放つ。
「どうして私に絡むのよ!私になんて興味ないくせに!」
香取くんが茫然と私を見ている。
胸が痛かった。苦しかった。
でも一度出てきた言葉は留まることが出来ずに滔々と溢れ出す。
「そうやって興味もないくせにからかってさ。私が何にも出来ないからってバカにしてるんでしょ?
人のことはあれこれ言うくせに、自分はいつも無関心でやる気なくて、香取くん自身が頑張ってるのなんか見たことないよ!」
「……」
「香取くんこそもっと真剣に生きなさいよ!カッコ悪い!
そんな香取くん…
嫌いだよ!!」
言い切るや私はバッグを引っ掴んで部屋を飛び出した。