剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
香取くんたちの初戦は私のちょうど目の前の試合場で行われる。
試合場の側で姿勢を正して座っている香取くんが見えた。
(香取くん、いつもと違う)
そこにいるだけで気迫が伝わってくる。
剣道の試合はいくつかのやり方があって、この大会は団体戦の勝者数法というやり方で、先鋒・次鋒・中堅・副将・大将の5人が相手の5人とそれぞれ試合をして、勝者の数で勝敗を決める。
そして、香取くんは副将として臨むらしい。
先鋒、次鋒と勝って、中堅の選手が出てくるところで香取くんが面を着ける。
きりりとした無駄のない動き。
「勝負あり!」
中堅の選手が制限時間の4分ぎりぎりのところで一本取られ、負けてしまった。試合の行方が香取くんに懸かる。香取くんが立ち上がった。
試合場で礼をして、中央に進み出ると、しゃがんで竹刀を構える。
「はじめっ!」
「せぇぇぇーい!」
「やぁぁぁぁっ!」
いつもは怖いと思ってしまう激しい掛け声も、今日はこんな広い会場で離れたところにいても香取くんの声が聞けることの嬉しさの方が勝る。
(香取くん!頑張って!)
身のこなしも足さばきも他の選手よりもずっと華麗に見える。
(欲目なのかもしれないけど…)
でも香取くんは私にとって誰よりもカッコ良くて、輝いて見えた。
パシィーーッ!
面を狙ってきた相手の竹刀を払い除け、そのまま振り被る。
「小手ーーッ!」
ダダン!パァーン!!
「小手あり!勝負あり!」
小気味良い竹刀の音の後に、審判の旗が一斉に上がる。
香取くんはあっという間に二本取って勝ってしまった。
(やっぱり香取くんは凄いよ)
初戦を突破した香取くんたちは次の試合も危なげなく勝ち進んだ。