剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
三回戦目。
次鋒と中堅が負けて後がない状況でも香取くんは余裕綽々で。
その悠然とした様子に初めから既に相手が圧倒されていた。
「面ーーーッ!」
パァァァーン!
思わず観客席から拍手が湧く。
「面あり、勝負あり!」
(香取くん…)
感嘆の溜め息が漏れる。
「なぁ、あの副将凄くね?」
(え…?)
近くでした声に振り向くと、他校の男子生徒二人が香取くんの方を指差して話していた。
「あぁ、あそこの剣道部に知り合いがいて聞いたんだけど、最近入った一年生らしい」
「一年!?」
「ヤバイよなぁ、あんなん当たったらウチ勝ち目ないよ」
(剣道やってる人から見てもやっぱり香取くんは凄いんだ…)
自分が誉められてるみたいに嬉しい。
そしてその後大将が勝ち、準決勝進出が決まった。
準決勝の対戦相手は、と掲示板を確認する。
(あ…)
『S商業高校』
あの雨の日、河原で香取くんに暴力行為を行った人たちの学校─
私はぞくっと身震いする。
(まさかと思うけど、何もないよね…?)
準決勝の試合場でS商業の面々を見ても顔を覚えているわけもなく…
香取くんの様子を見てももちろん眉ひとつ動かさないので相手があの時の人なのかは全く分からなかった。
(きっと大丈夫だよ…きっと)
試合は二勝一引き分けで香取くんが試合場に立つ。
(大丈夫。次も圧勝だよ)
無意識に両手を胸に重ねる。