剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
私は席を立ち上がり、観客席の一番前まで通路の階段を駆け下りると、フェンスから身を乗り出す。
香取くんは相手に向かい、右手だけで竹刀を構える。
「合議」
(香取くん!香取くん!)
腕は防具がないもの、絶対痛いと思う。
でも香取くんはそんな素振りも見せず、きりっとした居ずまいで正座している。
そんな香取くんに駆け寄れないことにやきもきする。
「反則2回。1本あり!勝負あり!」
(良かった、終わった…)
私はぐったりとフェンスにもたれ掛かった。
でもどうしよう…
これから決勝があるのにあの腕じゃ…
階下に見える香取くんの姿はいつもと変わりない。
でも香取くんのことだから、本当は痛くてもきっとああいう何でもない顔をすると思う。
大将戦を終えてアリーナを出ていく彼の後ろ姿を、私は不安な気持ちで見送った。
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