剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
一礼して中央に進み蹲踞する香取くんからは、ここまで緊張感がびりびりと伝わってくる。
「はじめっ!」
「せいやぁぁっ!」
「たぁぁぁぁぁっ!」
いつにも増してみなぎる気迫に会場の空気も張り詰める。
「やぁぁぁーっ!」
パパンッ!パンッ!ビシッ!!
竹刀がぶつかり合う音が響き渡る。
「えぇぇぇーい!」
仕掛ける相手の剣を凌ぎ、反撃する。それをまた相手の剣が受け止める。
試合は拮抗して、お互い譲らない。
(香取くん!頑張って!)
攻めては防がれ、攻め返されては防ぐ。一瞬の隙さえ致命的な緊迫した状況。
そんな中、香取くんが僅かに退いたのを見逃さなかった相手が香取くんの面を目掛け竹刀を振る。
香取くんが咄嗟に受け止めようと構える。
けれど…
受け止め切れなかった竹刀が弧を描き、あわや身を翻した香取くんの胸の前を掠めた。
(もしかして香取くん、左手に力入ってないんだ!?)
五分五分に見える試合だけど、実は実力は香取くんの方が上で、左手にほぼ力を入れずに臨んでいるようだ。
(やっぱりさっきの試合で痛めてたんだ…)
試合場の香取くんは身を翻した反動を使って奇襲するも遮られてしまう。
(あぁどうか神様…)
頑張ってる香取くんを勝たせて下さい。
いや、それ以上に香取くんの腕を守ってください─
両手を合わせて痛いほど握り締める。