星降る夜の月


「じゃ、俺帰るわ。」


「そう、じゃあね」


結局あの後は麦茶はぶっかけず、だらだらと学校であったことを聞いていた。


聞いたところで行かないけれど。


湊は来た時と同じように屋根を飛んで帰っていった。


猫みたい。


誰もいない家は、退屈だ。


ネットはあまり好きじゃないし、漫画も全てストーリーを知っているから面白くない。


仕方なく、今度は世界史を始めた。


季節は春だ。


桜がほとんどないけれど、最後に見せつけようとでもいう感じの花吹雪が時折吹く。


今年は桜の開花がかなり遅かったから、もう5月になろうとするのにまだ咲いている。


……お花見、行こうかな。


私はただ、学校に行きたくないだけで、外に出たくない訳ではない。


適当に着替えて、薄いパーカーを羽織り、ご飯を持って自転車に乗って出発する。


カメラも忘れずに。


春風が背中を押す。


優しい。


私を見捨てないでいてくれる。


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