王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「エミリー? どうかしたか?」
フレデリック様が、訝し気に問いかける。その声も、今は一枚幕を隔てた向う側から聞こえてくるかのように、遠い。
目の前の感情に素直に身を任せる事が、どうしても憚られた。
その場の感情に身を任せてしまうには、色濃く残る英美里としての意識が、私の前に高い壁のように立ちはだかる。
だけどエミリー自身も、悠々自適にほどほどに、おひとりさまで暮らしていくのが望み。
一旦立ち止まってしまったら、その壁を打ち破ってまで、再び踏み出したいと望むほどの熱量はない……。