王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「なんだって!?」
「この薬の主成分は、生姜、陳皮、人参。それらひとつひとつには、確かに炎症を抑えたり、咳に効果があったりはする。その他に、気管支炎に利く半夏も入っているけど、それにしたってとても十五万エンネを取れるような代物じゃないよ。乾燥や、粉砕の手間、もちろんその全部を含めても」
ミハルは驚きに目を瞠り、そしてギュッと瞼を瞑ると俯いて、悔しさにギリギリと歯噛みした。
「言われるまま、毎月十五万エンネにも及ぶ薬を飲ませていても、妹の症状は一向に回復しない。それがもう、十年にもなる。……もしかすれば本当は、どこかで疑惑は感じていたのかもしれない。だけどそれでも、妹の事を思えば止める訳にはいかなかったんだ」
苦し気な、ミハルの心の吐露。
同じ薬を扱う物として、許せない思いだった。患者さんの藁にも縋りたい気持ち、それを食い物にするなど、一番あってはいけない事。