王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
ギィィイイイイーー。
「いらっしゃいませ」
すぐに扉が開かれ、コロコロと柔和な笑みを浮かべた中年女性が、店内から顔を覗かせた。
「どのような症状でお困りでしょう? でもね、どんな症状でも安心してくださいな。うちの主人の薬は、万病に効果が期待できる妙薬でございますからね」
私の背中にそっと手を添えて、女性は優しく、けれど力強く断言する。
……すごく、巧妙だな。まず、そう思った。
藁にも縋る思いで訪れた患者に、この女性の言葉はどれ程甘美な希望となる事だろう。
「あの、妹が酷い咳の発作を起こすので、今日はその相談に……」
「まぁ、それはお辛いですわね。まずはこちらで、詳しく症状をお伺いいたしましょうね」
女性は少し大仰な仕草で共感を示し、私を店内奥に誘導した。