王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「あら、少々お待ちくださいな」
女性はそう言って席を立った。
「なぁフレミー先生! 家内の具合が悪くなる一方なんだよ! ……って、フレミー先生はいないのか?」
扉が開くなり、語気を荒くした男性が店内に飛び込んできた。
「主人は今、往診で出ておりますの。ねぇダニエルさん、落ち着いてください。先にも言った通り、奥様の病状は一日二日で良くなる類のものではないんですよ」
折しも私が座る応接ソファは、店内の一角を衝立で仕切っただけ。衝立を一枚挟んだ向う側から、会話は筒抜けになっていた。
私はそっと、そおっとソファを立つと、衝立から店内を覗く。
女性が、私に背を向けるような恰好で、入口付近で客の男性と対峙していた。
「だけど、良くなってる気がしない……。あんたのところで貰った馬鹿高い薬だって、欠かさずに飲ませてるのに……」