王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「ダニエルさん、お辛い気持ちはよく分かります。だけどここで、投薬を中止してしまっては、良くなるものも良くなりませんわ」
「……そうだよな」
背中には、二人の会話がいまだ途切れずに聞こえていた。
私には目的があった。私が欲しいのは、帳簿。
王都にいながら、薬草類を全て自給自足という事はあり得ない。絶対に、どこかから仕入れて調薬している。
そうなれば必然的に収支に関する帳簿を付けているはずで、私はその帳簿を手に入れたかった。
私は店舗のノッカーを叩く前、この平屋家屋を通りからぐるりと一周して見分している。
広くはない平屋は、大部分が店舗にあてられていた。ならば奥の居住部分は、あっても二部屋。一室を寝室にあてると考えれば、もう一室を調薬や店舗運営に関する事務作業にあてているに違いない。
案の定、店舗部分を出ると、廊下を挟んで奥に二つの扉があった。腐っても薬師、二部屋あるうちのどちらで調薬を行っているのかは、漂う匂いですぐに分かった。