王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
女性が立ちふさがる入口からの脱出は、断念した。
私は震える足を叱咤して、唯一の逃げ道となりそうな窓に向かう。なけなしの力を振り絞って机に乗り上がった。
高い位置にある四十センチ四方の窓には、机に乗り上がれば手を掛ける事が出来る。そうして、細身の私が身を滑り込ませる事も可能にみえた。
シュンッ――!
机に片足を乗り上げたところで、背後に空気を割く音を聞く。
私に直接衝撃があった訳じゃない。だけど揺れる空気の振動は、確かに届いた。
っ!!
この衝撃で、私は見ずとも男が手にした物の正体に思い至った。心臓がバクバクと音を立て、喉の奥がキュウウっと詰まった。
「チッ! 外したか」
「ちょっとお前さん、しっかりしとくれよ!」
「ウルセェや! テメェは黙って見てろ!」
ギシギシと軋む首を、背後に巡らせた。
さっきよりも近くなった距離で目にしたは物は、間違いなかった。女性と言い合う男が手にした物。それは、縄なんかじゃない。