王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
さっきの音は、男の振るった鞭が立てた音だ!
しかもその鞭が、牛追い鞭などの用途でない事は瞭然で、明らかに人を傷つける事を目的としていた。
「ヒッ」
くぐもった短い悲鳴は、私の意思とは別に、反射的に漏れ出た。
「次は外さねぇ!」
私は慌てて視線を男から窓へと移し、伸び上がって窓枠に手を掛けた。そうして反対の手に握った帳簿ノートを、渾身の力で外に向かって放った。
シュンッ――!
再び、空気を切り裂く音が響く。
「キャァアアッッ!!」
けれど今回はその直後、私の右足に激痛が走った。衝撃で、窓枠に掛けていた手から力が抜ける。
私は大きくバランスを崩し、乗り上がっていた机から、床に転げ落ちた。