王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
ちなみに、エミリーの考案した痴漢撃退用霧吹きは、このアギレスをも唸らせている。これを鑑みるに、エミリーの知識技能というのは、実は国家機密レベルに相当する。
「なに、別段予定は入っていないから問題ない。それで、今日は一体どうした?」
俺はそんなエミリーの才覚に舌を巻きながら、危惧もしていた。エミリーの知識技能が世に知れ渡れば、悪用せんと目論む輩が出て来るのではないか、この心配は常に付き纏う。
しかし同時に俺の中、ひとつの決意が浮かぶ。
エミリーに降りかかる火の粉があれば、振り払う。危険な芽があれば、早急に摘む。そんなふうに何者からも、俺がこの手でエミリーを守ればいい。いや、守りきる。
「実は、先だって儂のところに匿名の嘆願が上がってきたんじゃよ」
「ほぅ、嘆願か。アギレス立ち話もなんだ、掛けて話そう」
「あぁ」
アギレスを応接ソファに促す。