王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
パンや野菜、目に見える品物と違い、薬というのはなかなかその真価が分かりにくい商材だ。
巷では、効果の怪しげな妙薬が、目が飛び出るような高値で売買されているのが実情だった。
「この手紙と共に、薬も同封されていたのか?」
アギレスの事だ。聞かずとも、既に薬の成分を解析しているに違いなかった。
「あぁ、薬の中身は陳皮、生姜、人参、半夏。どれも確かにそれなりの効能は見込め、まったくの紛い物とは言い難い。しかしどう転んだって、高額にはなり得ぬ材料ばかりじゃ」
俺は重く頷いた。しかしアギレスから聞かされた答えに、驚きはない。
「アギレスよ、これはきっと氷山の一角にすぎん。効果も不確かな薬が高額な値で売られている状況は、まさに俺も憂慮していたところだ。議会でも既に認識は共有しており、間もなく正式に法案審議にはいるところだ。むろん法整備の段になれば、薬剤の知識に富んだ其方のところにも、正式な協力要請が来るだろう」