王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
床に転がる女もまもなく、ミハルが拘束をするだろう。
俺は一直線に、エミリーに向かった。
「エミリー!」
エミリーはガタガタと体を震わせながら、激しく咳き込んでいた。俺は、エミリーをそっと、ガラス細工に触れるよりも丁寧に抱き起こす。少しでも楽な体制の保持が出来るよう、激しく噎せるエミリーを、俺の胸に凭れ掛からせた。
そのままエミリーの細い背中と腕を、落ち着かせるようにさする。
首にくっきりと浮かぶ、絞められた指の痕が痛々しかった。けれどエミリーの全身に目線を走らせれば、エミリーは全身の至るところに怪我を負っていた。
擦り傷やぶつけたように赤くなっている箇所は数えきれない。
けれど段々と目線を下げていき、エミリーの右足に走る裂傷を目にした瞬間、俺はそのあまりの痛ましさに息を呑んだ。