王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 裂けた部分は血を滴らせ、肉を覗かせていた。俺は片腕でエミリーを抱き留め、空いた手で懐から手巾を取り出す。

 いまだ呼吸が整わないエミリーは、答えられる状態ではない。

「エミリー、少し痛むかもしれんが、右足の傷の止血をするぞ」

 それでも俺は一声かけてから、大判の手巾でエミリーの右脹脛を止血した。

 手巾を結び付けた瞬間、俺の肩に身を預けるエミリーが、一際大きく体を震わせる。俺はその小さな肩を、抱き締めてやるのが精一杯だった。

 俺はそのまま、腕の中で震えるエミリーを宥めるように擦り続けた。

「フレデリック団長、捕縛が完了いたしました」

 ミハルの声を受けて振り返れば、ミハルが夫婦を後ろ手に縛り上げて拘束していた。

「ご苦労。ミハル、すまんがこのまま現場の後処理と応援部隊の指揮管理を頼みたい」
「はい! お任せください!」



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