王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
エミリーは夜着の前袷をグッと握り合わせて、ガタガタと震えていた。その震えが、熱からくる悪寒が理由でない事は、瞭然だった。
「……お母さん。これも全部、私のせいって思ってる?」
状況が事細かに語られている訳ではない。けれど繋ぎ合わせれば、状況が容易に想像出来る。
エミリーの苦悶に歪む表情から、その後の母親の言葉までもが手に取るように知れた。
エミリーが心に負った傷を思えば、愚かな行為に及んだ父親はもちろんの事、母親にも殺意が湧く。
飛び込めるものなら、今すぐにだってエミリーの夢の中に飛び込んで、俺がこの手で震える肩を抱き締めてやりたかった。
エミリーに慰めを、与えてやりたかった! 俺はやるせなさに歯噛みして、固く拳を握った。
「ふふふっ。もっと早く、こうすればよかった……。私はやっぱり、一人がいいの……。悠々自適のおひとりさまが、いーの、いーの……」
エミリーは最後にこう呟いて、ふっと体から力を抜いた。
エミリーは、幸福な一人きりの世界に微睡む。閉じた瞼の隙間から透明なものが滲み、珠を結んで頬を伝った。