王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 どんなに理性的におひとりさまの人生設計をしていても、その時々の感情までは制御できない。

 フレデリック様の水色の双眸が甘く細められれば、その瞳に滲む優しさにドキドキする。

 微笑んで名前を呼ばれれば、胸がときめく。

 そうして、大きな手に背中をトントンと擦られると物凄く安心する。すごくすごくホッとして、ともすればその温もりに、もっと身を預けたくなってしまう。

 だけど、私の心の奥底に住む意固地な私が、踏み出す事を許さない。

 傷ついたら、どうするの?
 裏切られたら、立ち直れない。

 一人で自立して過ごす今を、捨てていいの? そんな疑問を、私に向かって投げかける。

「英美里、分かってる。分かってるよ……」

 私は心の奥、もう一人の自分に向かって呟く。

「やっぱり、一人がいいね。悠々自適のおひとりさまが、いーの、いーの」

 呟いたのは、いつもとなんら変わり映えのない台詞。なのに今日に限っては、自分の言葉がまるで戒めのように重く響いた。






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