王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「はい、お陰様で大分楽になりました」
「そうですか。では、食事を並べさせていただきますね」
侍女はひとつ頷いて手を引くと、今度は私が食べやすいように枕辺に簡易テーブルを寄せ、昼食の用意を始めた。
確かに擦られれば、気持ちよかった。だけど不思議と、フレデリック様が触れた時のように、スゥッと痛みが昇華していく感覚は得られなかった。
それは、侍女の手がどうこうじゃない。
……この感覚はきっと、私の心によるもの。
私の心に、フレデリック様という特効薬が、てきめんの効果を発揮していたに違いなかった。
「ではエミリー様、食べ終わった頃にまた参ります。何がございましたら、遠慮なくいつでもお呼びください」
侍女は簡易テーブルに最後の皿を並べると、小さく礼をして客間を後にした。侍女の丁寧な心遣いに頭が下がった。
「どうもありがとう」
侍女の背中を見送って、ホゥっと小さく息を吐く。