王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 ……心は、正直だ。特に人は弱った時、理性を凌駕して感情に走りやすいのだと、私は今身をもって感じていた。

 緩く首を振って、堂々巡りの思考の渦を振り払う。そうしてゆっくりとフォークを取ると、とりどりのメニューの中から、食べやすそうな果物に狙いを定めた。何種類かの果物の中から、私が選んだのはプラムに似た小振りの桃。

 ツクンと刺すと、桃は刺した部分から、ジュッと果汁を滴らせる。同時に、周囲にふわりと甘い香りが漂った。

 ……あぁ、そうだ。昨日の桃もこんなふうに甘く……、ううん、昨日の桃はもっと蕩けるように甘く香った……。



 溢れる果汁を見つめながら、私は昨日の一幕を思い出していた。




< 221 / 284 >

この作品をシェア

pagetop