王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 昨日の夕刻も、私はそれはそれは大きな桃を前にしていた。

「どうだエミリー、立派な桃だろう?」

 私に向かって桃を差し出してみせるのは、満面の笑みを浮かべたフレデリック様だ。

「ほんとですね。こんな桃は見た事がありません。どうしたんですか?」

 フレデリック様の言葉通り、エミリーの知る限りでは見た事も聞いた事もない立派な桃だった。
ここサントマルク王国で一般的な桃というのは原種に近いもので、日本でいうところのプラムによく似ている。

 けれど今目の前に差し出されたそれは、英美里の知る白桃のようだ。

「ふむ。実は数日前、父の要請を受けて少し動いたんだ。その対価として、父に融通させた」

 え? なんでもない事にように、サラリともたらされた驚愕の事実に慄く。

 だって、フレデリック様の父親なら、その人は誰もがひれ伏す国王陛下……。



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