王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
味わうように咀嚼して、嚥下した。桃は蕩ける甘さを残し、口内から溶けるように消えた。
「フレデリック様、とても甘くて美味しいです」
私は嬉々としてフレデリック様を見上げた。
すると、私を見下ろす宝石よりも澄みきった水色の双眸とぶつかった。
フレデリック様は、零れ落ちそうなくらい目をまん丸に見開いて、私を見つめていた。
っ!! その瞬間、頬にカッと朱が昇った。
改めて自分の取った行動を認識し、愕然とする。私は、フレデリック様の手ずから桃を口にして、あまつさえその指先を吸い上げた!
私の口元には、いまだフレデリック様の長い指が差し出されたままになっていた。その指先が、果汁と私の唾液に濡れていると思えば、ゾクリとした。
私達は身じろぎもせぬまま、互いの瞳に映る自分を見つめていた。先に動いたのは、フレデリック様だった。