王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
これが昨夕から、今朝にかけての出来事。
改めて、フォークに刺した桃を見下ろす。
……一度は、夢だと思った。……ううん、思おうとした。
だけど、フレデリック様の手ずから食べた桃の記憶は、夢まぼろしな訳がない。
フォークを口に運び、パクリと桃を含む。そうすれば口腔に、ジュンッと果汁の瑞々しさが満ちる。
……美味しい。
だけど、昨日の桃はもっともっと蕩けるように甘かった。
味覚、嗅覚、そして視覚……。
五感に残る記憶までは、誤魔化せない。ならば、昨日のフレデリック様も、その瞳に映った私も現実。
熱の篭る水色の奥に、燃え立つような焔が見えた。