王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
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エミリーが怪我を負い、一週間が過ぎた。
足の裂傷は抜糸こそ済んだものの腫れが残り、いまだ微熱も続いていたが、八日目の今日はもうエミリーが熱にうなされて叫ぶ事はない。
全身の打撲と擦過傷に関しては粗方治り、エミリーの症状は全体的に落ち着いてきていた。
けれど体力の消耗は著しく、エミリーは一日のほとんどを眠って過ごす。
今も静かな客間に、エミリーの寝息がスゥスゥと規則的に響いていた。
当初の高熱で辛そうな様子を思えば、眼下で健やかな寝息を立てるエミリーの姿に、胸が安堵で満たされる。
額にかかるエミリーの髪を、サラリと耳に掛ける。
「……エミリー、あとはもう良くなるばかりだ。よく、頑張った」
答えぬエミリーに小さく呟き、名残惜しくも枕辺からそっと踵を返した。