王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
エミリーの部屋を出た俺は、屋敷の者にエミリーの介助をよく頼み、王宮に向かった。
屋敷から王宮までは徒歩で十分と掛からない。しかし独立して居住を構えてからは、王宮議会への出席を別にすればすっかり足が遠い。
「フレデリック、久しいな」
「やぁヴェルガー兄さん。だけど別段、久しくはないだろう? つい五日前にも顔を合わせているからな」
その俺が真っ直ぐに訪れたのは、兄の私室。執務室でなく、敢えてプライベートな居室で顔を突き合わせているのは、人の目も耳も排除して話がしたかったからだ。
俺は外交大臣の不正を暴くにあたり、手持ちのパイプを有効に使った。選択肢はいくつかあったが、俺は躊躇わず最強のパイプを選んだ。
世間一般が王族に抱くのは、表面的な華やかさの裏側で、親兄弟で血みどろの権力抗争に明け暮れているイメージだそうだ。歴史を紐解けば、それらも一概に間違いとは言い難い。しかし今代の王家に関しては、まるっきりこれには当て嵌まらない。
「おぉ、そうかそうか。まぁ、お前は普段なかなか王宮に帰って来ないからな。今のは口癖のようなものだ」