王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
兄は、そんな俺をジイッと見つめ、スッと双眸を細くした。
「……愚か、か。だけど最愛と定め、全てを投げうって愛を尽くした。そんな捨て身な愛に一身を賭した外交大臣自身は、きっと本望なんじゃないかな?」
兄からもたらされた言葉に、目を見開く。
「あぁ、もちろん贈賄に身を染めた外交大臣の所業は別だ。奥方への不貞という意味でもそうか。まぁ本望だろうがなんだろうが、罪は適正に裁くさ。だけど、なんだろうな……。真に愚かなのはきっと、確かな愛に気付きながらも対峙する資格すら逸し、指を咥えて見つめるだけの鈍つく野郎だ」
兄は自嘲気味に吐き捨てて、薄く笑う。その目には、言いようのないほどの後悔が滲んでいた。
一体、どれほどの後悔の荒波の中を、兄は生きているのだろう。