王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
それを目にした兄が、俺を肘で突く。父を泣かすなと、そんな兄の言葉が聞こえてきそうだ。
「という事で父上、桃は改めて農園主に融通してもらってください。申し訳ありませんが、その桃はこの間の駄賃として俺に譲っていただきます」
「な、なんじゃと!?」
告げた瞬間、父の目が悲壮感に染まる。そうして無意識にだろう、桃を守るかのように懐に抱いた。
「父上は先日、アイリーンへの説得を俺に押し付ける際『この礼は、なんでもする! だから今回ばかりは、どうか頼む!』と、こうおっしゃいましたよね?」
父の目が、悲壮感から絶望に染まる。
そんな父の様子を見るに、俺の良心も流石に痛んだ。しかしこればかりは、俺とて譲れん!
「よもや忘れたとは、言わせません」