王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 英美里は決して、こんな謝罪を望んでいた訳じゃない。そもそも英美里は、両親との対面を避けて、ひとり緩和病棟で迎える最期を選んだのだ。

 英美里の望みは、自己完結。

 ……あぁ、そうか。そういう意味では、英美里の望みはちゃんと叶ったんだ。英美里は望み通り、自分で人生を完結したんだ。

 ならば、寂しいと感じる心は他ならない、エミリーの心。

 英美里の記憶はあくまでも、記憶。今、進行形で流れる時を生きているのは他ならない私、エミリーなのだ。

 前世の呪縛に囚われて、今世まで生きる事などない。

 ……だって私は今、エミリーなのだから。
 しっくりと、理解が胸に沁み込んだ。

 それと同時に、段々と眼下の景色が霞む。肩を抱き合う両親も、静かに眠る英美里も、輪郭がおぼろになって宙に溶ける。

 その時、眠る英美里の目が、一瞬だけ私を捉えた。それはほんの一瞬の事。けれど私と英美里、確かに二人の目線が絡む。


 その目が、何を伝えたかったのか。英美里と袂を分かった私には、もう分からなかった……。







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