王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
私は目を見開いたまま、微動だにできず固まった。その頭上に、ゆうらりと影が掛かる。
……っ!!
視界に飛び込む影の正体は、改めて確認するまでもない。傾き始めた陽光を受け、陰影を深くした端正な美貌……。
「っ、フレデリック様……」
「エミリー」
呼ばれた名前の、温度の高さに胸が跳ねた。
耳が拾うのは、ここ数日ですっかり聞き馴染んだフレデリック様の声。だけど滲み出る情感の温度が、まるで違う。
ぞわりとした熱が、私の全身を熱くする。
「エミリー、今の言葉は……、いや。もしかすると俺は夢を見ているのだろうか?」
フレデリック様の長い指が、私に向かって伸びる。その指先が確かめるように、私の頬に触れる。
っ!!
体に、緊張が走る。それは反射で起こった単なる反応にすぎず、そこに私の感情は介在しない。