王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「ごめんくださーい!」
鶏の世話を終え、戦利品の卵と自家栽培の野菜で簡単な朝食をとっていると、我が家に来訪者があった。
「はーい。アンソニーでしょ? いいわよ、入ってちょうだい?」
ニーディー村は狭い村だ。見ずとも声だけで来訪者が知れた。
「お、おじゃまします」
軋む扉を押し開けて顔を覗かせたのは、想像通り二軒先の鍛冶屋の息子、私と同年のアンソニーだった。
「早かったのねアンソニー、その後のお母さまの調子はどう?」
朝から準備出来ていると伝えてはいたものの、こんなに早くやって来るとは思っていなかった。
私はお行儀悪く、もぐもぐと咀嚼しながら横の薬品棚へと手を伸ばす。そうして、昨日の内に用意していた薬袋を取り上げた。
「ああ。エミリーの薬のお陰で大分いいよ」
「そう、良かった。だけど今度はあそこまで重篤になる前に呼んで? そうしたら、もっとずっと症状も軽く済むから」
「……あぁ、うん」
私の言葉に、アンソニーはきまり悪そうな表情で俯いた。