王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「約束だよ、お母さまに咳の症状が出た段階ですぐに教えてちょうだいね?」
「……うん。分かったよ」
私からの「約束」に、アンソニーは僅かな逡巡の後、頷いた。
私には聞かずとも、アンソニーがこんなに症状が悪化するまで報せるのを躊躇した理由が分かっていた。
「よし、それじゃこれ、次の薬ね。これを一週間飲んで、様子を見て薬を続けるか止めるか決めさせてもらうね」
私はそれ以上の追及はせず、アンソニーに用意していた一週間分の薬が入った袋を手渡した。
アンソニーは、おずおずと差し出した手に、まるで戴くようにして薬を受け取った。
「ありがとうエミリー」
「どういたしまして」
アンソニーの家は、金銭的な余裕がない。