王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 立ち尽くす私を、玄関先に立つ母が、無言のまま見下ろしていた。母の目もまた、とても我が子に向けるとは思えない、憎々し気な物だった。

「お嬢様、お父様は出発前でお忙しかったんですよ。さぁさ、こちらで朝食にいたしましょうね」

 私はお手伝いの女性に促され、ダイニングに向かった。

「……お前が、余計な事を言うから。お前が……」

 ボソリとした母の怨嗟の呟きに、背筋が凍った。私は思わず、隣のお手伝いの女性のエプロンに縋る。

「? お嬢様、どうされました?」

 中年の域を僅かに越えるお手伝いの女性に、母の呟きは届かなかったようだった。だけど私の耳には、いつまでも母の怨嗟の声が反響していた。

「な、なんでもないっ」

 母の語った「余計な事」が何を指すのか。その時の私には、分からなかった。だだ、恐ろしさに身を縮めた。



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