王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
まだ、私がオムツ離れも出来ていなかった幼い頃、私はよく母の腕に抱かれ、あるいは母の手でベビーカーを押され、多くの時間を一緒に過ごしていた。
通いのお手伝いさんはあくまで家事の手伝いがメインで、私の世話のほとんどが母の手で、そして母が頻回に会う「お友だち」の手で行われていた。
「英美里、これからお友だちのところに行きましょうね」
「うん」
母はよく、こんなふうに私を連れて「お友だち」に会いに行った。私を留守番させて、母が一人で「お友だち」に会いに出掛けていく事もある。どちらの時も、母はとても嬉しそうだった。
私の前で「お友だち」という呼び名で徹底していたのは、きっと母なりの精一杯の自衛だったのだろう。
そうして母は、あの日も嬉しそうだった。