王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
そうすれば、圧し掛かっていた重みの主は、容易に私の上から転げ落ちた。
震える手で襟ぐりを掻き合わせ、床に目線を向けた。
そうすれば、暗がりに慣れた目に浮かび上がるのは、父だった。
遠目にも、父がほとんど酩酊状態である事は知れた。女の力で容易に弾き飛ばされた父は、無様に床に転がっていた。
「ハッ! この、あばずれが」
そして父はこれだけ吐き捨てると、そのまま床で高いびきを掻き始めた。
酒臭い呼気と共に、父が吐き捨てた一言。
これはおそらく、酒に酔った父が、私を通して見た母に対して投げつけた言葉に違いない。
けれどこの言葉は、私の胸を重く深く抉った。私の行動じゃない。私という存在そのものが、父の言うそれであると、知らしめられた思いだった。
バクバクと激しい鼓動が、いつまでも落ち着かなかった。
私はなんとか震える足で立ちあがると、酩酊する父の脇を通り過ぎた。そうして居間のソファで、まんじりともしないまま、震える体を夜明けまで抱き締めていた。