王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
名門一家を維持していくにはきっと、綺麗ごとでは済まないのだ。醜聞を明るみにされては堪らない母が、承知しない訳がなかった。
私は、全てを永遠に口を噤む事を引き合いにして、母が用意したマンションに移った。
そうして高校卒業までは母の援助を受けて暮らした。けれど大学からは奨学金とアルバイトで生計を立てて、援助は受けなかった。
それ以降、実家とは疎遠のまま成人を迎え、薬剤師の国家資格を取得して就職した。就職難の煽りを受け、希望していた調剤メーカーの研究職にはあぶれてしまったけれど、お陰で漢方医のクリニックで薬剤師として八年勤めた。
そこで培った漢方の知識が、近代薬学成立以前の現世で大活躍している訳だから、人生というのは分からないものだ。
そうして誓った通り、私の人生に男は一切寄せ付けなかった。
一人きりの居住は、何者にも侵されない私だけのお城。
自立して過ごす生活は充足していて、欠片も寂しいとは思わなかった。
だからやはり、私の人生に男は不用だったのだ。
死の淵に瀕してさえ、私から実家に報せる事をしなかった。こうして私は一人、静かに緩和病棟で三十年の人生に幕を下ろした。