王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
……なのに今、一人きりの室内に寂しさを感じるのはどうしてだろう?
それはたぶん、エミリーとして転生した私が、真に愛し愛される祖父母の夫婦関係を間近に見て過ごして来たから。
同時に祖父母から、私は打算のない愛をいっぱいに注いでもらった。
きっと私は、笑顔と笑い声が絶えなかった祖父母のような夫婦関係に憧れがある。けれど実際に、私がそれに踏み出すには、英美里としての記憶が枷となる。
本音を言えば、怖いのだ。人は皆、どうやってその異性が生涯の伴侶になり得ると判断するのだろう。
もし、一歩を踏み出して噛み合わなかったら? もし、婚姻後に決定的な性格の不一致が判明したら?
そんな、たらればの恐怖に怯えて過ごすくらいなら、初めから一人でいた方がいいのではないかと思ってしまう。
最初から一人なら、怖くもないし、傷つきもしない。
「……うん。やっぱり、一人がいいわ! 悠々自適のおひとりさまが、いーの、いーの」
私はそう結論付けて、空いた洗濯物干しに、今朝方摘んでおいた薬草を吊るしはじめた。