王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


「失礼しました。手が滑ってしまっただけで、他意はありません」
「……ふむ、そうか」

 フレデリック様は、手が滑っての件で若干不服そうにしながらも、頷いてみせた。

「それで、今日はどのようなご用向きでしょうか? 忘れていかれたハンカチでしたら、先ほどアイリーンに預けてしまいました」

 私は不躾を承知で、敢えて玄関先で切り出した。ありがたくも、今日は上天気だ。だから玄関先で立ち話をしたって、肩を濡らす事はない。

「ああ、途中でアイリーンの乗る馬車とすれ違い、呼び止められた」

 フレデリック様はそう言うと、懐からハンカチを取り出してみせた。それは確かに、私がアイリーンに託したハンカチ……。

「あの……。なら、一体どうして?」
「なに、こうして洗ってコテまであててもらったのだ。礼を伝えない訳にはいかないからな」



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