王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「よしっ、大丈夫そうですね。はい、フレデリック様どうぞ」
「なに? もう縫い上げてしまったのか!」
ズイッと向かいからズボンを差し出せば、フレデリック様は目を見開いて身を乗り出した。
「なんと! エミリーは薬剤の知識ばかりでなく、優れた裁縫技術まで持っているのだな!」
受け取ったズボンの尻の部分を凝視して、フレデリック様が感嘆したように言った。
「それはオーバーですよ。このくらいの縫い物なら、女性達は結構、出来るものです」
「何を言うか! 俺の姉や妹など、雑巾一枚縫い上げる事も出来ん。逆に、軍の備品保持で裁縫を学ばされている俺の方が、よほどマシな雑巾を縫い上げるというものだ」
……力を篭めて言い切られた。
けれどフレデリック様の姉妹ならば、王女様だ。普通に考えて裁縫はしないだろう。
それよりも問題は、後半の聞き捨てならない台詞だ!