上京した僕が馬鹿でした。
上京
気づけば、もう東京。
羽田空港へ着陸。
羽田空港には、例の陽気なおじさんとその奥さん(おばさん)が迎えに来ていた。

おじさん「よくぞ来た!イケメン!待ってたぞ!イケメン!」

おばさん「いや〜修二大きくなって〜も〜可愛い可愛い」

修二「イケメンでも、可愛くもないよ(なんだこのおばさんの田舎の近所のおばさん感)」

おじさん「あーそうだなーイケメンではないな!おじさんの方がイケメンだし!」

修二「そ、そこは否定しないんだ…(おじさんなんてルー大柴の少し若い版じゃんかよ)」

おじさん「ははは、とりあえず店直行だから!ランチ営業もあるし!」

修二「上京したての甥っ子を、もう働かせんの?」

おじさん「もう、甥っ子じゃないな〜従業員だな〜」

修二「(この人、酷くないですか?この前、電話では従業員の前にお前のおじさんだ、悪いようにはしないって言ってませんでした!?)はめられた…」

修二は羽田空港につくも、一瞬で勤務先「九州居酒屋 モツ郎」へ連行された…

店に着くと、従業員が迎えてくれた。

アメリカと日本のハーフの「クリス」28歳。
22歳までアメリカで育った。
まだ日本語が片言。

もう1人純粋な日本人。
めちゃくちゃ人見知りらしい。
「ミエハル」21歳。
人見知りなのに見栄を張るなんて、めんどくさそう。

クリス「コンチワ!マテタヨ!マスターノムスコサン!」

修二「息子じゃなくて、甥っ子です!」

クリス「オー!オイガツオ!イイオナマエ!」

修二「いやいや、誰が良いダシ取れって言ったよ…」

おじさん「やっぱ、良いツッコミすんだよな〜」

おばさん「修二、可愛い!」

修二「(はーめんどくさい!何この茶番!失敗した!この先不安!)」

修二、上京早々、個性派に囲まれ、困惑。

おじさん「じゃ!とりあえずランチ営業がんばちゃおー!」

こうして、始まった。モツ郎新体制。
ランチは周りに立ち並ぶビルのサラリーマン達で賑わい、終始忙しかった。

おじさん「修二!ご苦労さん!案外良い動きだったぞ!」

修二「そりゃ、どーも。それより、今日から、おじさんの家に寝泊まりするんだよね?」

おじさん「あ、あーそうだなーははは」

修二「え、なになにその反応。なに?」

おじさん「修二!悪い!」

修二「なにが!?」

おじさん「お前の泊まる部屋、うちないんだわ。」

修二「え?おじさん、任せろって!!!言ったじゃんか!!!」

おじさん「それは、お前東京に呼ぶ口実であって…あのな、うちもクリス住まわしてて、リビングにももう布団をひける場所がないんだ…」

修二「帰ります。北海道帰ります。」

おじさん「ままま、待った!店の座敷がある!そこなら自由に使ってくれて構わん!」

修二「俺が休みの日は、どうすんだよ!プライベートまるでなしですか!?」

おじさん「わ、わかった。早めに修二の住める場所、確保するよ。」

修二「はあ…」

修二は完全に騙された。
おじさんにただの道具のように。
頑張ろうと決心した自分を心から馬鹿らしく感じた。
その夜、修二は店の近くにある歩道橋に登り、ちょうど見える東京タワーを眺めていた。

修二「仕事、クビになって。おじさんに乗せられて、東京来て。ちゃんとした家もない。騙されて、北海道に戻れる貯金もない。はあ。」

修二「こんなことなら、来なきゃよかった。東京なんて。ってなにもかも自己責任だよな、こんな歳だし。」

修二「上京した俺が馬鹿だった…上京した俺が馬鹿でした!!!」

修二は東京タワーを見ながら叫んだ。

それからというものの、1ヶ月程、モツ郎の店内で過ごす日々は続き、仕事にもまあまあ慣れていた。

その夜の営業の事だった。

お客様に(還暦迎えたんじゃないかなくらいの男性)修二は声をかけられた。

男「きみ〜新人さんかい〜?」

修二「はい、先月に入りましたよ。」

男「なんか〜疲れた顔してるね〜大変かい?仕事〜」

修二「(なにこの人、語尾をオリジナルの癖で伸ばすな〜)そ、そうですね。ちゃんとした家もないですし。大変なのかもしれませんね。」

男「ホームレスフリーター?」

修二「なんですか、それ!聞いたことないですが…」

男「今作ったんさ〜 ねえねえ〜マスター呼んで来てもらえる〜?」

修二「あ、はい。(なんだよ急に)マスター!お客様呼んでますよ。」

おじさん「あいよー!今行くー!」

おじさん(マスター)がお客様の元へ来た。

おじさん「修二、ちょっとあっちのお会計お願いしてもいいか?」

修二「はーい。」

修二はその場を離れた。

おじさん「お待たせしました。お客様。って吉岡さんじゃないですか!」

吉岡「ひっさしぶり〜1年ぶりにきちゃった〜」

おじさん「吉岡さん、1年前に移動になってそれっきりでしたもんね!いやー!お久しブリーフ!」

吉岡「マスターも相変わらず〜 んでんで〜マスター、あの子、大丈夫かい〜〜」

おじさん「あの子?あ!修二ですか?」

吉岡「そ〜そ〜さっきいた子〜 家がないって言ってたけど〜」

おじさん「あー、そうなんです。無理矢理呼んだって言うか、僕の甥っ子なんですよ。」

吉岡「甥っ子さん!なんでまたここで働いちゃって〜〜?」

おじさん「うちで働いてた子、先々月に3人やめちゃって、働ける子も見つからなかったんで、北海道から呼んじゃいました!はっはは」

吉岡「それで、家なしか〜〜マスターもなかなかのやり手だな〜」

おじさん「修二には、本当に申し訳ないですよ。」

吉岡「マスター、申し訳ないって思ってるだけじゃ〜修二くんに何にも伝わらないよ〜修二くんだって〜色々考えて、疑ったはずだよ〜」

おじさん「は、はい。吉岡さんのおっしゃる通りですよ、本当に…」

吉岡「修二くんの家〜用意しようか〜?」

おじさん「と、言いますと…?」

吉岡「修二くん〜このままだと可哀想だし〜この吉岡様が〜修二くんの〜家確保するって事〜」

語尾を誇張する、吉岡節炸裂。

おじさん「いいんですかい?そんなことが許されるんですかい?」

吉岡「いいさ〜マスターの甥っ子さんに協力するさ〜」

おじさん「あ、ありがとうございます!」

吉岡「1週間〜時間ちょうだい〜」

おじさん「はい!」

こうして、おじさんと吉岡さんの中で話は進んで行き…

1週間後…
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