上京した僕が馬鹿でした。
出会
修二「ノーゲストでーす。看板消しますね。」
この日の営業が終了した。
おじさん俺は呼び出された。
修二「おじさん、どうしたの?」
おばさん「修二、可愛い!本当に可愛い!」
なぜかおばさんもいた。
おじさん「お前は一旦、席外してくれ。」
おばさん「修二が可愛いのにそんなことできません!可愛いわ修二〜」
おじさん「いいから、ちょっとだけな?」
おばさん「はーい。修二!今日も可愛いわよ!」
おばさんは可愛いって言葉を思う存分吐き出して、この場を去った。
修二「静かになったね、おばさんいなくなって。」
おじさん「そうだな…」
修二「それで?話があるんでしょ?クビ?俺クビ?」
おじさん「修二〜冗談言うなよ〜 クビになんかするわけないだろ!だって、俺はお前のおじさんだぞ?」
修二「その言葉、今となっては全く信用ないよ…」
おじさん「そうだな、修二のこと騙してここまでやって来てもらったんだからな…」
修二「もういいよ!気にしないで!」
修二は作り笑いならぬ甥っ子スマイルをおじさんに見せつけた。
おじさん「いいスマイルだ!ちゃんと笑えるじゃないか!ってこんな事はいいんだ。修二、待たせて悪い。これ今月の給料だ。ご苦労様。」
修二「あ、ありがとう。これでやっと、自分の家も探せるよ。」
おじさん「あと、もう1つ。これ。」
修二「なに?これ」
おじさん「新しいお前の家の鍵だ!遅くなって悪い!」
修二「え?おじさん勝手に決めちゃった?俺の家!」
おじさん「嫌だったか?でも月3万でいいみたいなんだ…」
修二「東京で、3万!?どんな事故物件?それとも4畳半トイレ風呂なし?」
おじさん「3LDK、風呂トイレ別だ、37階建ての37階だってよ…」
修二「絶対、それ人死んでるよね!?37階って札幌のJRタワー展望台と同じですけど?何人、人死んでるんですか?こわ…こわっ!」
JRタワー展望台とは北海道札幌市にある札幌駅直結の展望台である。
おじさん「人も死んでいないけど、人はいるらしい。」
修二「終わった…心霊万歳…うん!おじさん!俺住まない!」
おじさん「修二、頼む!これはうちの常連さんの紹介なんだ…ほら、この前来てただろ、60歳くらいで語尾が誇張する人…」
修二「あー、あのおっさん…」
おじさん「吉岡さんって言うんだけど、前までは次長だったのに、1年経ってあってみれば、うちの店出てすぐの高層ビルあるだろ?そこの社長になっててさ、完全なる太客になると思うんだわ〜さすがに断れないだろ?」
修二「わかったよ…仕方ない…」
またしても勝手に、こっちの気持ちなんて考えず決められてしまった。
東京に来てからと言うものの、操り人形のようにいいように使われて。
こんな日々がいつまで続くんだろう。
疲れた。逃げたい。がまた頭の中で巡っていく。
修二「上京なんて、しなきゃよかった。」
そんなことを呟きながら、新しい家へ向かった。
修二「デカっ!なにこの建物…もらった住所は間違ってないし…」
恐る恐る、オートロックを開ける。
「ウィーン」
修二「うわっ!開いた。」
エレベーターに乗って最上階の37階のボタンを押す。
修二「マジかよ、なんでこんなところに俺は来てるんだべ…吉岡さんって何者?こんな家紹介するなんて…」
エレベーターが37階へ近づくに連れて、修二の中の不安も募っていくばかりだった。
「チーン」
エレベーターが開いた。
37階、3701号室。新居は目の前。
鍵は持っているが、修二は念のためインターホンを押した。
「ピンポーン」
応答がない。
「ピンポーン」
修二「出てこない…ってそうか、鍵はもらってるんだし、勝手に入ってもいいのか…」
修二が鍵を開けようとしたその時、ドアが開いた。
目の前には思いもよらない光景が…
相手も、開いた口が塞がらないという表情をしていた。
そんなところで、ドアが閉められた。
修二「え、女?」
家主(女)「男?なんで?なんで?一旦落ち着こう、もう一回ドア開けてみよう。」
「ガチャ…」
修二と家主(女)の目が合う…
「バタンッ!」
またドアが閉まる。
家主(女)「え、男だ。恐い。今日来るって言ってた人はおじさんから女って聞いていたし………もしかして、ストーカー?」
修二「また、閉められてしまった… というか完全に相手は女だった、でもはっきり顔は確認できなかった… おじさんが心霊ではなく人がいるって言うのは、女であって同居人がいるってことだったのか。ちゃんと聞いておくんだった…」
また、ドアが開く。
今度は完全にチェーンが付いていて、顔を隠しながら女は話して来た。
家主(女)「あ、あの。ストーカーさんなら、わ、私、警察にも言いませんし、は、はは早くそのままこのたたて建物から出て行ってもらえませんか…?」
女の声は震えていた。
修二「い、いいえ、いいえいいえ、そそそ、そん!そんなスチーマー、い、いやストーカーででではないででですすす!!!すすすぅ!!!」
修二も動揺と緊張で声が震えて、噛み倒した。
またドアが閉まる。
「ガチャン」
修二「(ま、待てよ、部屋番号間違えたか?)」
修二は手に持っている紙を見て間違っていないこと再確認する。
修二「3701号室…合ってる…」
その頃、家主の女はドアの向こう側で、どこかに電話をしていた。
家主(女)「ねえ!お、おじさん!た、助けてよ!」
「どうしたんだ〜〜?」
家主(女)「な、な、なんか家の前に、男が立ってるの!」
「特徴は〜〜?」
家主(女)「めめめ、メガネかけてて、身長は高くて、20代前半くらい!もーいいから助けに来てよ!」
「あ〜あ〜」
家主(女)「あ〜って!?」
「頼んでたじゃ〜ん〜 今日から〜」
家主(女)「え、えぇー!?お、女の子っておじさん言ってなかった!?」
「言ったよ〜〜 ま〜そ〜ゆ〜ことだからよろしく〜〜」
ブチップープープー
家主(女)「(切られてしまった…)そ〜ゆ〜ことってどーいう事?」
「ガチャ…(半開き)」
修二「(ド、ドア開いた…)あ、あああ、あの!たたた多分ですけど、今日からお世話になるかならないかわかりませんがあああ!修二と申します!よ、ろしくおねが、いしますうぅ……」
修二「よろしくお願いいたします!!!」
吹っ切れた修二は強気に言った。
家主(女)「はあ…」
ため息が聞こえた後に、半開きになっていたドアが完全に開いた。
修二「………」
修二は女の顔を見るなり、言葉を失った。
女がここ数年、苦手になっていた、それももちろんあったが、この後の修二の反応がそれだけではないことを物語る。
修二「えぇ!?え、えぇ!?」
家主(女)「ど、どうしてそんな大きな声を上げるの!」
修二「だって…だって…え、えぇぇ!?」
修二「あ、あ、あ、あ、あ、アラ…タ…」
修二「あ、あ、アラタ…二…」
修二「新谷メイぃぃぃ!?!?!?」
俺のキャパはここでもう追いつかなくなっていた…
北海道で、仕事をクビになったストレスと、東京に来て、約1カ月半家のない生活のストレス。
そして、今日本で一番注目されている人気女優「新谷メイ」が目の前にいる。
なんだこの、今生え揃っている髪の毛の頭皮が全て解放されて抜け落ちてしまいそうな感覚は。
なんだこの、あと10分も目を閉じてしまっていたら三途の川を渡ってしまいそうな、この気持ちは。
修二は「新谷メイ」と叫んだままそのまま崩れ落ち、意識を失ってしまった。
この日の営業が終了した。
おじさん俺は呼び出された。
修二「おじさん、どうしたの?」
おばさん「修二、可愛い!本当に可愛い!」
なぜかおばさんもいた。
おじさん「お前は一旦、席外してくれ。」
おばさん「修二が可愛いのにそんなことできません!可愛いわ修二〜」
おじさん「いいから、ちょっとだけな?」
おばさん「はーい。修二!今日も可愛いわよ!」
おばさんは可愛いって言葉を思う存分吐き出して、この場を去った。
修二「静かになったね、おばさんいなくなって。」
おじさん「そうだな…」
修二「それで?話があるんでしょ?クビ?俺クビ?」
おじさん「修二〜冗談言うなよ〜 クビになんかするわけないだろ!だって、俺はお前のおじさんだぞ?」
修二「その言葉、今となっては全く信用ないよ…」
おじさん「そうだな、修二のこと騙してここまでやって来てもらったんだからな…」
修二「もういいよ!気にしないで!」
修二は作り笑いならぬ甥っ子スマイルをおじさんに見せつけた。
おじさん「いいスマイルだ!ちゃんと笑えるじゃないか!ってこんな事はいいんだ。修二、待たせて悪い。これ今月の給料だ。ご苦労様。」
修二「あ、ありがとう。これでやっと、自分の家も探せるよ。」
おじさん「あと、もう1つ。これ。」
修二「なに?これ」
おじさん「新しいお前の家の鍵だ!遅くなって悪い!」
修二「え?おじさん勝手に決めちゃった?俺の家!」
おじさん「嫌だったか?でも月3万でいいみたいなんだ…」
修二「東京で、3万!?どんな事故物件?それとも4畳半トイレ風呂なし?」
おじさん「3LDK、風呂トイレ別だ、37階建ての37階だってよ…」
修二「絶対、それ人死んでるよね!?37階って札幌のJRタワー展望台と同じですけど?何人、人死んでるんですか?こわ…こわっ!」
JRタワー展望台とは北海道札幌市にある札幌駅直結の展望台である。
おじさん「人も死んでいないけど、人はいるらしい。」
修二「終わった…心霊万歳…うん!おじさん!俺住まない!」
おじさん「修二、頼む!これはうちの常連さんの紹介なんだ…ほら、この前来てただろ、60歳くらいで語尾が誇張する人…」
修二「あー、あのおっさん…」
おじさん「吉岡さんって言うんだけど、前までは次長だったのに、1年経ってあってみれば、うちの店出てすぐの高層ビルあるだろ?そこの社長になっててさ、完全なる太客になると思うんだわ〜さすがに断れないだろ?」
修二「わかったよ…仕方ない…」
またしても勝手に、こっちの気持ちなんて考えず決められてしまった。
東京に来てからと言うものの、操り人形のようにいいように使われて。
こんな日々がいつまで続くんだろう。
疲れた。逃げたい。がまた頭の中で巡っていく。
修二「上京なんて、しなきゃよかった。」
そんなことを呟きながら、新しい家へ向かった。
修二「デカっ!なにこの建物…もらった住所は間違ってないし…」
恐る恐る、オートロックを開ける。
「ウィーン」
修二「うわっ!開いた。」
エレベーターに乗って最上階の37階のボタンを押す。
修二「マジかよ、なんでこんなところに俺は来てるんだべ…吉岡さんって何者?こんな家紹介するなんて…」
エレベーターが37階へ近づくに連れて、修二の中の不安も募っていくばかりだった。
「チーン」
エレベーターが開いた。
37階、3701号室。新居は目の前。
鍵は持っているが、修二は念のためインターホンを押した。
「ピンポーン」
応答がない。
「ピンポーン」
修二「出てこない…ってそうか、鍵はもらってるんだし、勝手に入ってもいいのか…」
修二が鍵を開けようとしたその時、ドアが開いた。
目の前には思いもよらない光景が…
相手も、開いた口が塞がらないという表情をしていた。
そんなところで、ドアが閉められた。
修二「え、女?」
家主(女)「男?なんで?なんで?一旦落ち着こう、もう一回ドア開けてみよう。」
「ガチャ…」
修二と家主(女)の目が合う…
「バタンッ!」
またドアが閉まる。
家主(女)「え、男だ。恐い。今日来るって言ってた人はおじさんから女って聞いていたし………もしかして、ストーカー?」
修二「また、閉められてしまった… というか完全に相手は女だった、でもはっきり顔は確認できなかった… おじさんが心霊ではなく人がいるって言うのは、女であって同居人がいるってことだったのか。ちゃんと聞いておくんだった…」
また、ドアが開く。
今度は完全にチェーンが付いていて、顔を隠しながら女は話して来た。
家主(女)「あ、あの。ストーカーさんなら、わ、私、警察にも言いませんし、は、はは早くそのままこのたたて建物から出て行ってもらえませんか…?」
女の声は震えていた。
修二「い、いいえ、いいえいいえ、そそそ、そん!そんなスチーマー、い、いやストーカーででではないででですすす!!!すすすぅ!!!」
修二も動揺と緊張で声が震えて、噛み倒した。
またドアが閉まる。
「ガチャン」
修二「(ま、待てよ、部屋番号間違えたか?)」
修二は手に持っている紙を見て間違っていないこと再確認する。
修二「3701号室…合ってる…」
その頃、家主の女はドアの向こう側で、どこかに電話をしていた。
家主(女)「ねえ!お、おじさん!た、助けてよ!」
「どうしたんだ〜〜?」
家主(女)「な、な、なんか家の前に、男が立ってるの!」
「特徴は〜〜?」
家主(女)「めめめ、メガネかけてて、身長は高くて、20代前半くらい!もーいいから助けに来てよ!」
「あ〜あ〜」
家主(女)「あ〜って!?」
「頼んでたじゃ〜ん〜 今日から〜」
家主(女)「え、えぇー!?お、女の子っておじさん言ってなかった!?」
「言ったよ〜〜 ま〜そ〜ゆ〜ことだからよろしく〜〜」
ブチップープープー
家主(女)「(切られてしまった…)そ〜ゆ〜ことってどーいう事?」
「ガチャ…(半開き)」
修二「(ド、ドア開いた…)あ、あああ、あの!たたた多分ですけど、今日からお世話になるかならないかわかりませんがあああ!修二と申します!よ、ろしくおねが、いしますうぅ……」
修二「よろしくお願いいたします!!!」
吹っ切れた修二は強気に言った。
家主(女)「はあ…」
ため息が聞こえた後に、半開きになっていたドアが完全に開いた。
修二「………」
修二は女の顔を見るなり、言葉を失った。
女がここ数年、苦手になっていた、それももちろんあったが、この後の修二の反応がそれだけではないことを物語る。
修二「えぇ!?え、えぇ!?」
家主(女)「ど、どうしてそんな大きな声を上げるの!」
修二「だって…だって…え、えぇぇ!?」
修二「あ、あ、あ、あ、あ、アラ…タ…」
修二「あ、あ、アラタ…二…」
修二「新谷メイぃぃぃ!?!?!?」
俺のキャパはここでもう追いつかなくなっていた…
北海道で、仕事をクビになったストレスと、東京に来て、約1カ月半家のない生活のストレス。
そして、今日本で一番注目されている人気女優「新谷メイ」が目の前にいる。
なんだこの、今生え揃っている髪の毛の頭皮が全て解放されて抜け落ちてしまいそうな感覚は。
なんだこの、あと10分も目を閉じてしまっていたら三途の川を渡ってしまいそうな、この気持ちは。
修二は「新谷メイ」と叫んだままそのまま崩れ落ち、意識を失ってしまった。