MAN of DESTINY王太子の執拗な求愛
🐝⋆゜

レイモンドに裏切られ、食欲もなかった美桜

何も口にしたくなくなっていたのに…
さくらんぼの プックリした赤い実はそれを啄む小鳥のように
食欲をそそった。


美桜はさくらんぼをご馳走になるため木の主人を土手に座り待っていた。



真っ赤で落ちそうな、さくらんぼばかりだからきっと収穫に来ると思った。

一時間過ぎた頃アップバングショートのパーマをかけた青年が歩いてきた。長身で眉はあがっててヤンキー風。
目がキリツとして口元があがってる。いい男だ。

首に、かけた手ぬぐいがヤンキー何だけど違うみたいな、感じ?!!

つい声をかけるのをためらった。
彼はチラッと美桜を見て、通りすぎた。

ちょっとさくらんぼは、
残念だけど、怖い感じだからやめとこ。

土手から下り、
フレアスカートをパンパンと
土を落とし帽子を押さえ歩き出した。

花柄のゆったりとしたスモックが、
フンワリとした長い髪と揺れる。


気持ちいい風だぁ。



日本なら雨の後で、
じめーっとしてるがこのマスカリッチ国は雨は降るけど長くは降らない。
風もカラリとしている。



さくらんぼの木を振り返ると、
エッ‼️
彼もじっと振り返って美桜を見ていた。



「さくらんぼ、食べたい?」

彼が大きな声で叫びながら近寄って来た。

マスカリッチ国は季節が無い。
梅雨みたいな?夏みたいな。
過ごしやすい国。
美桜はこの国が気に入った。



「いえ!大丈夫です。
 休んでただけで、
 不快に思われたらすみません。」
 ペコリと頭を下げた。

しかしまたアレが‥
私のペットが腹の中で高らかに鳴き出した。

≪ギュルギュルギュルグ~グ~≫
(やばいやっや。)

彼は「まじで!!」
(あ~もう、笑ろてるやん。)
クルッとUターンしてサカサカ歩く自分では早足のつもり。

コンパスの長い彼は直ぐ追いついた。


「ごめん、ごめん、失礼だったね!
 あんまり可愛いからつい。」


        「つい?」

「見とれたんだ!」

(はい!ナンパ決定!!チャラ男認定。)

急ぎますんで、バスが着ちゃうし。

彼は 「車で送るよ。」


「いえいえいえ、
 水知らずの方に其処までして
頂かなくても
慣れてますので大丈夫です。」
断っていると


「アレ、殿下じゃないですか?
 またまたお忍びですかい。
 女にみっか‥あ!!
 もう捕まったんですかい?」


「違うよ、俺が捕まえそうなのに
逃げられそ うな んだ!
警戒されてる。」



トラクターに乗ったカールおじさんみたいな中年の男性は

「アハハハ、
 身持ちの硬いと評判の殿下なのだから安心しなさい。真面目で誠実だから、しかも今からじゃバスは走んない
よ。]


「…そうですか?じゃあ、仕方ない野宿か。」
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