十日月夜のおとぎ話
屋上のドアを開けたとたん、ぶわぁと強い風に包まれた。

そのままフェンスの方へとまっすぐに進むサクの背中をぼんやりと眺めていた。


――どうして。

あたしはどうして、この男を拒めないんだろう。



サクは金網フェンスを背もたれにするように地面に座った。

あたしはその横で立ったままフェンス越しの景色を眺めた。


強い風に乗って、キンモクセイの甘ったるい香りが鼻をかすめ、酔いそうになる。




「見えそ」


「へ?」


サクの視線の先に気づいて、あたしは慌ててプリーツスカートの裾を押さえた。

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