十日月夜のおとぎ話
さっきからの風であたしのスカートはヒラヒラと舞い、その中がちょうど見えそうな位置にサクの目線があった。


「バカッ! 信じらんない!」


「いでっ」


あたしはポカッとサクの頭を叩くと、スカートを押さえながらサクの横に座った。



サクは「ふぁああああ」と大きな欠伸をしたかと思ったら、ふいに歌を口ずさみはじめた。


――ほんと、呆れるぐらいマイペースだ。



あたしはそんなサクをぼんやり眺めた。

そして視線を胸元に落とす。


ネクタイをしていないサクの胸元を見ていると……



あの日の記憶が甦ってきた。
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