十日月夜のおとぎ話
その瞬間……

あたしの頭にはフラッシュバックのようにある光景が浮かんだ。


それはサクが他の女の子としていたキスシーン。



「やぁ……」


あたしは両手でサクの体を押しのけた。


サクの顔をまともに見られない。


あふれ出しそうな想いと、

零れそうになる涙を必死に堪えた。



あたしは俯いたまま、震える声でゆっくりと呟いた。




「――ネクタイ……返して? ……あたしも返すから」




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