十日月夜のおとぎ話
いつになく寂しげな表情でそう言った。



――ずるいよ……。


そんな顔するなんて。


あたしは首を横に振る。



「無理……。サク、背高いもん」



サクは何も言わず、そばにあった机に腰かけた。


そうすると、ちょうど二人の目線が同じ高さになった。



「これでい?」



あたしは「うん」と頷くと、ネクタイをサクの首にかけた。
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