十日月夜のおとぎ話
あたし達はどちらともなく顔を近づけた。


涙で顔がぐしょぐしょになったあたしには、しょっぱいキスの味がした。



あたし達流の、サヨナラのキス。



――《素直になること》



それが、ノゾムが教えてくれた魔法の呪文だった。


あたしは心の中で思うことにした。


好きだよ……サク。



どこまでも意地っ張りなあたしは、言葉にすることができないでいるけど


きっとサクには伝わってるよね。


この唇から……。





――大好き。
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