十日月夜のおとぎ話
結局あの日以来、ノゾムとは話していない。

カレンダーをぼんやり眺める。


あんな約束、本気にしてるわけじゃないけど。

今日はノゾムが言っていた“十日月”の日だ。



時刻は18時を回ったところ。


あたしは、パソコンを立ち上げた。


チャットにログインしてみるものの、やはりノゾムはオフラインのままだった。


やっぱなぁ……。

からかわれただけなんだよね、きっと。



あたしは、ベッドにボスンと体を沈め、仰向けになって天井を眺めた。


なぜか胸の奥から寂しさが込み上げてきて、視界がじわりと歪んだ。


目を閉じると、それは涙となって目じりを流れ落ちた。



もぉ……何やってんだよ、あたし。


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